イノベーション
起業・製品化プロジェクト
フォトニクスセンターのミッションである「イノベーションの創出」を実現するため、フォトニクス関連の技術を用いて自ら起業または製品化を行う研究者からの提案を募集し、採択案件についてセンターから様々な支援を行ってきました。この公募に対しては外部の審査委員による厳正な審査を行いました。
【提案要件】
- 2年以内の起業・製品化提案であること
- フォトニクス関連の起業・製品化提案であること
平成24年度採択
- 先端増強ラマン散乱顕微鏡の製品化
- 20年に亘り基礎研究を進めてきたプラズモン増強型のナノ・ラマン顕微鏡を製品化することに成功し、商品としてベンチャー企業から販売することとなりました。先鋭な金属ナノ探針の製造技術がポイントです。
- 紫外光光源用波長変換結晶(CLBO)の開発
- 紫外光光源用波長変換結晶(CLBO)の開発させることに成功し、平成27年度にフォトニクスセンター内にCLBO(Osaka-CLBO)を製造するベンチャー企業の設立準備を進めています。レーザー製造企業や加工機メーカーと連携して、CLBOを搭載した紫外レーザー、加工機を実現します。
- ガスクロマトグラフシステムの製品化
- プラズマフォトニクスの応用研究として、協働企業・島津製作所と連携し、飛躍的に感度を向上させたガスクロマトグラフ「Tracera(トレイセラ)」を開発し島津製作所より世界各国で発売開始しました。従来の検出方法に比べてより多くの試料にも対応できます。
- eco電球の開発
- 白熱電球フィラメントの表面に微細な穴をあけて熱輻射スペクトルを制御する電球を開発しました。穴のサイズによってスペクトルが変化することを実証しました。これにより高効率なフルスペクトル光源の実現を目指しています。
平成25年度採択
- ポータブル電気化学発光測定装置の製品化
- 化学・バイオセンサー、細胞計測、抗酸化・発光材料研究などに用いるポータブルな高感度測定装置を、大学発ベンチャー企業“バイオデバイステクノロジー社”との連携で製品化しました。電気化学発光を用い、高S/N、高感度フォトンカウンティングが可能、広い検量範囲を実現出来ます。対象に応じた大阪大学のマイクロ流体チップ設計技術と連携し、カスタム化とビジネス展開が可能です。
- 光・PCR技術を利用した病原菌・感染症遺伝子の現場簡易迅速検出システム
- 遠心力と熱対流を利用する特許技術で、ユーザーが検体液を注入するだけで簡単にDNA増幅反応を1チップで行う現場使用(POCT)迅速・高感度なPCR検査装置を実現しました。医療現場や食品工場、飲食店などの各種現場環境において、多剤耐性ブドウ球菌(MRSA)、インフルエンザやノロウィルス、腸管出血性大腸菌などの各種病原菌へ対応した迅速な高感度検知と診断が可能となります。
- 窒化物系デバイス特性を向上させる世界最高品質GaN ウエハ
- 液相成長法であるNaフラックス法を用いて、Si以外では存在しなかった「完全(無転位・無歪)GaN結晶」の育成に初めて成功しました。高品質GaNウエハを用いれば、レーザーディスプレー実現に不可欠な緑色レーザー光をはじめ、赤~紫外領域の高出力レーザーダイオードや高輝度照明用LEDといった光デバイスをはじめ、電力損失がSiの1/10以下のパワーデバイス、携帯電話の1,000倍の速度・通信容量を実現する超高速動作トランジスタ等の省エネルギー用光・電子デバイスが実現できます。
平成26年度採択
- 高速・偏光無依存型液晶光変調素子
- 焦点可変な光学レンズ、照射方向を変えられる照明、光通信用フォトニックスイッチなどに用いる高速かつ偏光無依存な位相変調素子を開発しました。液晶の電圧による屈折率・位相変調機能を用いていますが、従来の液晶素子は、棒状分子が一様配向したネマティック液晶を用い、数ボルトの低い電圧でスイッチングできる一方で、応答速度が数十msと比較的低速であり、光学特性が偏光に依存する欠点がありました。本プロジェクトでは、液晶と異種素材を複合した新規材料、具体的には、100ナノメートル程度の微細な空孔を有する高分子ネットワークと液晶を複合し、液晶分子を独立したナノ空間内で駆動することで、サブミリ秒応答を実現し、液晶分子が自発的に螺旋構造を形成するコレステリック液晶を用いることで、異方性を相殺し、液晶でありながら偏光無依存な位相変調を実現しました。駆動電圧、応答速度、偏光無依存性を両立し、本材料を多くのデバイスに搭載すべく、開発に取り組
んでいます。
- 超解像レーザー顕微鏡の製品化
- これまでの超解像顕微鏡「飽和励起顕微鏡」の研究開発の成果を基に、製品化に向けた装置を開発しました。超解像顕微鏡は2014年のノーベル化学賞を受賞した研究課題ですが、受賞した技術とは異なる手法を2005年頃に考案し、原理検証から実験機の試作、バイオイメージング応用と基礎研究を進めてきました。製品化に向け、光学システムのコンパクト化、信号対雑音比を向上し、また培養細胞から生体組織の超解像イメージングについての応用事例を増やし、性能評価を行いました。製品化の過程では、光学システムや信号処理技術の見直しにより、解像度が向上し、複数の特許出願を行っています。現在関連企業と製品化の協議を行っています